ヘンリー8世(在位1509-1547) |
チューダー朝の時代は16世紀、フランスでは世紀の半ば頃にはルネサンス様式の家具が主流となっていたが、英国ではルネサンスの影響はほとんどなく、中世のゴシック様式の面影を多く残しており、この傾向は17世紀まで続いた。 椅子の構造は、板を組み合わせたパネルバックチェアが主体であり身分の高い者でもセトルと言う箱のような形のベンチを一人用にしたようなデザインのものであった。 この時代は国王は、戦争だけでなく領地の各地を旅してまわる必要もあったため宮廷もそれに伴い移動するため家具も持ち運びのできる構造になっていた。 |
チューダー時代のアームチェア 1540年頃 イングランド V&A Museum London |
実際にチューダー朝の時代に製作されたと明記されている家具は博物館でも意外と少なく、 デザイン的にチューダー朝と思われる品でも17世紀のものが多い。
そんな中でも16世紀と明記してあった写真をいくつか紹介する。 左の椅子はロンドンのヴィクトリア&アルバート美術館のもの。背板の上部の彫刻にルネサンスの影響が見られるが、基本的にはゴシックの家具という感じだ。 |
同時代のスコットランドのアームチェア 1540年頃 V&A Museum London |
こちらはスコットランドのもの。現在はUKという同じ国家と言うことになっているが、この時代、スコットランドは独立した国で、フランスとの関係が強かった。彫刻もフランスのルネサンスの影響を強く受けている。 |
ハンプトンコート宮殿 ヘンリー8世のキッチン |
ヘンリー8世のハンプトンコート宮殿はゴシックとルネサンスの混合様式で当時のインテリアを垣間見ることができるが、家具はほとんど失われてしまって残っていない。 |
ウェスト・ブレットン卿 |
上記のV&Aのチェアはチューダー様式と知られているものよりもゴシックに近い感じであるがこのベッドは私がヨーロッパで実際に見にした家具の中で唯一、明記された年代がヘンリー8世の時代で、デザインも一般的にイメージされるチューダースタイルの家具である。 ベッドだけでなく壁面パネルも含めて1535年頃に製作されたもので、おそらくヘンリー8世の訪問に際して作られたものだそうである。 このようなベッドはこの時代の歴史ドラマには必ず登場するアイテムで、また正にイングランド的な家具ということでハリーポッターなどにも使用されていた。 最近では英米でヒットした歴史ドラマ『The Tudors』(邦題 ザ・チューダーズ~背徳の王冠)では、チューダー様式の豪華な内装が再現されている。リンクはこちら |