Arts & Crafts Furniture

アーツ&クラフツの家具


 アーツ&クラフツ運動のきっかけとなったのはウィリアム・モリスが新しい自分の家におく家具を揃えようと思ったことである。彼は友人の芸術家たちと共に家の内装や家具などを自分たちで作り始める。したがって家具・インテリアとアーツ&クラフツ運動は切っても切れない深い関係がある。彼らは昔から英国に伝わる伝統的な手仕事を推奨し中世のギルドにその理想をもとめた。1890年頃には、ゴシックリバイバルの影響を受け素朴なアーツ&クラフツのデザインが確立してくる。その後、その思想は大西洋を越え北米大陸へと波及する。ヨーロッパではアールヌーヴォーと影響し合い変化していく中で、アーツ&クラフツをより深め発展させたのはアメリカであった。特にグスタフ・スティックリーの影響は大きく、彼は家具を製作する傍ら、雑誌「クラフツマン」を刊行。その精神を全米にひろめた。あのフランク・ロイドライトやグリーン兄弟など多くの建築家・工芸家によって優れたアーツ&クラフツの作品が生まれた。木材資源に恵まれた新大陸はヨーロッパよりもアーツ&クラフツの理想が実現しやすい状況だったのかもしれない。実際にこの時期には北米において多くの歴史に残る名品が残されている



Quartersawn White Oak
−柾目引きされたホワイトオーク−


アーツ&クラフツの基本は素材選びから始まる。素材は、オハイオ渓谷で採れる最高級のホワイトオークの柾目材を使用する。オークはヨーロッパでは紀元前から建築や家具・樽や各種道具などの調度品に使われてきた生活に欠かせない材料である。木材というのは無垢材を使用すると湿度や気温など環境に適応して伸縮する。その狂いの影響を最小限に抑えるために柾目材を使うのである。木材の歩留まりを考えると効率の悪い木取りであるが、できあがった製品の強度と耐久性は非常に高い。


グスタフ・スティックリーがシラキュースの自宅用に制作したサイドボード。1988年にバーバラ・ストライザンドがオークションで363,000ドル (約4900万円)で落札し、20世紀に制作されたアメリカ家具の最高価格を更新。話題になったが、1999年11月29日にニューヨークのクリスティーズで彼女のンドのコレクションが再びオークションにかけられ、596,500ドル(約6300万円)で落札され最高記録を更新した。(写真は90年代に100台だけ限定で制作された復刻品)


Ray Frake(虎斑杢)

グローブパークイン・ホールクロック
Elbert Hubberdによって設立された手工芸家の共同体、ロイクラフト・コミュニティの代表的な作品。 Hubberdは、Gustav Stickleyと同じように英国旅行の際にウィリアム・モリスのもとを訪れ、彼の影響を受けてThe Fra、The Philistineなどを出版し、アメリカのアーツ&クラフツ運動に最も貢献した人物の一人である。ロイクラフトとは、ロイヤル・クラフトを意味し、その作品にはRの文字の入った独特のロゴが記されている。

オ ーク材独特の特徴は専門的には放射組織と呼ばれるなめらかな線の存在で、それはオークの木に驚くべき強度を与える。 柾目材にはこの放射状組織が、まれに「ray flake」という波打った独特の杢目があらわれることがある。この美しい杢目は日本でも昔から虎斑・銀杢などと呼ばれ非常に珍重されてきた。Hile Studio の家具はこの柾目材だけを厳選して製作されている。

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