« 2006年06月 | メイン | 2006年09月 »

2006年08月25日

家具の価格と価値 その2

私が世界中の見本市やアンティークマーケットをまわる上では、家具の価値と価格は分けて考えている。そして現在生産している家具とアンティークや中古でも価値と価格の判断基準は異なる。
 まず、価値につてだが、一言でいうと素材・構造・デザインがよく調和しているものが良い。この3つの要素の内、どれかが突出していたり、またどれかが劣っていたりすると他がどんなに良くても何かしっくりこない。まずは素材であるが、高級な素材を使用すれば当然出来上がる家具も比例して高級なものになる。わざわざ高級な素材を使用するのだから、その長所をできるだけ生かす加工・仕上げを施したほうが良いのであるが、素材そのもののもつ高級イメージに頼って加工や仕上げの段階でコストダウンを図る家具がある。ビジネスである以上、市場価格が受け入れられなければならないのでしょうがないといえばそれまでであるが、長い目で見るそれが家具を台無しにしてしまい結果的に貴重な素材の無駄使いになってしまうことが多い。例えば良質のオークやウォールナットのような素材感のある無垢材をカントリー風のデザインにしながらポリウレタン塗装にしてしまう場合どである。ラバーウッド(ゴムの木)などのほとんどタダみたいな素材ならばそれでも良いかもしれない。長い目で見た場合のポリウレタン塗装の欠点は前回述べたが、せっかくウレタンのような塗装技術の発明されるはるか前から、自然のままで強度・美しさともに良質な家具材と知られていた無垢材を使用しながら、それをウレタンの塗膜でコーティングしてしまいプラスチックのような手触り・風合いにして、カントリーもないだろうと思うのは私だけだろうか?
 まあそれはともかく、この家具そのものの品質、いわゆるモノとしての価値の次に使用価値を考慮する。どんなところにおいたら最も美しいか?どんな場面・シチュエーションで使いこなせるかを想像する。
 そこに知的好奇心を刺激するようなエピソードなどあったり、新しいライフスタイルの提案が合ったりそれば、よし、ぜひ日本市場にも紹介してみようということになる。
 さて価値とは別にもうひとつの重要な要素、価格を査定する。日本の大手メーカーを退職して、私が初めて海外の家具見本市を見たのが89年。最初は、その規模の大きさ、日本の家具との品質基準の違い、そして価格の違いに驚いたものだが、それから17年、フランス・ドイツ・イギリス・イタリア・スペイン・オランダ・ベルギー・ルクセンブルグ・デンマーク・ポルトガル・ルーマニア・アイルランド・スイス・アメリカ・シンガポール・マレーシア・タイ・中国・インドネシア・・・数えてみると19カ国の国際見本市を回った。特に主要なパリ・ケルン・バーミンガム・ミラノ・ハイポイントは毎年欠かさず行っているため、実際に製品を見れば、どこで生産されていて、いくらくらいの家具か、ほとんどわかるようになった。そうして自分で値踏みした金額と相手の提示した金額を比べて違う場合は、自分自身が納得するまでいろいろと質問攻めする。そして納得した価格が、価値とのバランスがとれていると判断した場合、

それらを考慮した上で日本まで運ぶコストを計算し、日本での販売価格を設定して日本の市場でも受け入れられそうならば仕入をする。この運送コストが馬鹿にならない。航空便で運ぶのは論外だし、船便でも大きさで運賃が決まるので、たとえばソファなどは、10万円のものでも50万円のものでも同じ運送費がかかる。言い換えれば安いソファだと小売価格のうちソファそのもののコストはすごく小さくなるのである。また、運送費そのものより梱包料金も馬鹿にならない。そのため梱包料金と運送費をできるだけ節約するためコンテナ輸送は必須である

 価格についてのもうひとつの問題は、他の業種でもそうだが、中国の世界市場への進出である。もとから西側と東側の元共産国での経済格差が開くについれて、品質と価格のバランスがかなり崩れてきていたが、中国がそれをさらに拍車を掛けた。
 アンティーク調やカントリー調などの材料費が価格に占める割合が多い品は、よく見ると品質の違いが一目瞭然であるが、モダンデザインのものになると見分けが難しい。特に欧米資本の工場になると製品によっては、コストの安さを利用して、本国生産よりも上位のモデルを中国で生産している場合もある。
 もちろん、以前からコストの安い国でOEM生産するというのはあった。イタリアのあるメーカーなどは「これは台湾製だが、Made in Taiwanのシールをはがして、うちでパッケージをしてMade in Italyのシールを貼って出している。品質的には問題ないし、この方が日本人は買っていく!」と言っていた。まあこの商品の場合は、ほかにも各国の色々なな会社が扱っていて、普通は台湾製として売られていたのだが、輸入業者から問屋・小売店と流通した場合、シールを信じて売っている店には気の毒な話である!
 こういった例はともかくとして、デンマークのある有名な子供椅子は東欧のある国の工場で生産されている。当社も取引のある工場で、見本市でセールス用のスペックカタログを見ながら商談をしていたときにそっくりな商品があったので、価格を聞いてみたところ、これはまさにそのメーカーに依頼されて製造しているので、他のクライアントには販売できないという答えが返ってきた。合板を使用して機械で大量生産するものなので、デンマークで製造しても運送コストや各種のリスクも考えれば、最終コストはそんなに変わらないような気もするが、税金の高いデンマークのこと。やはりだいぶ違うのだろう。それにしてもポーランドでの工場出荷価格は、大体の予想がつくので、それとデンマークの小売価格を考えると、いくら人件費だけでなく税金も高いとはいえブランドイメージでそんなに儲けているのかと感心したものだ。
もっとも合板の量産品とはいえ、以前は西側レベルの精度と仕上げをできるメーカーが少なかったため、西側のOEMに耐える商品を生産できるメーカーは各国1〜2社しかなく、共産主義のため政治的なコネもないと中々取引はできなかった。それがここ数年で様変わりしてきたのだ。
 それと、今まで第3国では基本的にロープライスの商品しか生産していなかったが、欧米の技術指導のもとハイエンドの家具生産にチャレンジする企業が出てきたのである。特に中国の場合、国内市場の成長も著しいため、生産のサイクルが早く、国内市場での競争も激しいため、品質改良のスピードも驚くべきものがある。そして以前は欧米のメーカーでは実際の生産国を隠していたり、最終仕上げは本国で行っていたが、3年くらい前から生産国の見本市に欧米のブランド名を堂々と挙げて展示するケースが増えてきたのである。こうなってくると、あそこができるならばうちもといったモチベーションも強くなり、人材の引き抜き競争も激しく、家具製造業自体の発展が促進される。実際、中国での家具産地の見本市などは漢字をなくして、歩いている人々が東洋人でなければ、ヨーロッパの見本市と変わらなくなった。それに比べて東京国際家具見本市の周落ぶりは悲しい限りである。
 さて、以上は現在生産している家具であるが、アンティークや中古の場合はまた違ってくる・・・
その3へ続く

2006年08月18日

家具の価格と価値 その1

家具の価格はどうやって決まるのか?それは、アンティークやユーズド家具と新品の家具では違ってくる。アンティークなどは売り手がこの価格ならば売ってもよいと思う価格と、買い手がこの価格までなら支払ってもよいと思う価格が一致したもの、すなわち需給のバランスで相場が出来上がる。
それに比べて新しい家具は、原材料に加工する手間がかかるため同程度の商品ならばほぼ一定の原価が存在する。しかし近年だいぶ情勢が変わってきた。
 最近、中国が家具生産高で世界一になったそうだ。他の製品と同様中国製品は他の国に比べると単価が安い。それでも世界一、それも史上最高の生産金額だそうだ。 そんな情勢の中で、世界市場から家具を仕入れるときの価値判断はさらに難しくなってきている。
人件費が安いながらも品質が向上してきたため、今まで高級家具だったものと一見同じようなものが非常に安く手に入るようになった。消費者にとってはとてもありがたいことである。
マーケティング的には、消費者に支持される商品、すなわち、売れる商品=良い商品 であるが、当社の場合、必ずしもそれだけでは判断しない。
 もちろんビジネスである以上、いくら品質が良くても全然売れなければやっていけないのであるが、それだけではなく、なるべく長く使えるのはもちろんのこと、2次流通可能なもの、すなわち、中古になっても粗大ゴミにならず、商品として販売可能なものを選ぶようにしている。中古になっても商品価値を失わず、できれば100年後にアンティークとして流通する家具、そんな家具を理想としている。仕入現場でこのポリシーをつらぬくのは中々難しいことである。

当社は日本の家具店のほとんどがそうであるように箪笥の製造からではなく、米軍の払下げ品の販売からスタートした会社である。新品の家具も多く扱っていたため、戦後どのような家具が普及し日本の家具業界がどのような家具作りを行ってきたかも見てきたが、一方で払下げや中古家具を扱ってきた中で、かつての人気商品がその後どのような運命をたどるのかを数多く見てきた。
 国内では一流メーカーといわれるところの商品でも一度使えば新品同様でも中古品、しかも5〜6年も使えばよほど状態が良くても新品時の10%も値がつけばいいところ、ほとんどの場合、値はつかない。それどころか引き取り料金や処分料金がかかってしまう。中古車や電化製品を考えてもらえばイメージできるだろうか?
 何故、そうなるのか?それは、現代の家具は、高額な商品でも基本的に使い捨て商品として製造されているからである。昔に比べて塗装や接着材などの技術が発達したため、それまでは家具用には使い物にならなかったような木材が使用できるようになった。そして塗装の耐久性も高いためアンティーク家具のようなワックスかけもいらない。メンテナンスをしなくても昔の家具より長持ちするのである。しかし、最近主流のポリウレタン塗装やUV塗装は、どんなに長持ちしても10年もたてば、塗装がはげてきたり傷がついたりして、かなりみずぼらしくなってくる。そして一度そうなってしまうと、その耐久性の強さゆえに修理が困難である。というのは、もとの塗装を一度はがさないとそのまま上に塗装してもすぐはがれてしまうため、再塗装をする前にもとの塗装を落とすのにすごく手間がかかるのである。無垢材のテーブルトップなどは機械で削り落としてしまえば良いが、脚部や椅子などははじめから作るよりも手間がかかる。やそれに比べてラッカーやオイル、フレンチポリッシュなどの昔の塗装はちょっとしたキズなどは部分修理が可能だし、ワックス掛けなどのメンテナンスにより使い込んだ歴史が古色として味わいを増してくる。

To be continued

2006年08月14日

パリの家具屋街、フォーブール・サンタントワーヌ通り

パリ4区のマレ地区は、貴族の高級住宅地として栄えたところで、現在でもカルナヴァレ邸、スービーズ邸などの屋敷を訪れるとその栄華を垣間見ることができる。
バスティーユからのびる、フォーブール・サンタントワーヌ通り Rue Faubourg Saint-Antoineは、昔から家具屋街として知られたところである。
paris03.jpg
カフェもアンティーク家具を使用しておりこの通りならではの光景が見られる。
私が始めてここを知ったのは約17年前、ヨーロッパオフィスを開設しオランダに住み始めた頃である。当時ベルギーで買い付けたフランス製のアンティーク家具に良く似た品が載っている古いカタログを見つけ、今はどうなっているのかと興味を覚え、そこに掲載されている住所をもとに行ってみたのが最初である。残念ながらその番地は家具屋ではなかったが、フォーブール・サンタントワーヌ通りには、両側100件近くの家具ショップがあった。各ショップともそんなに大きくはないが、特色があり、パリやミラノの見本市で見かける家具が並んでいたのを覚えている。
その後、見本市などでアンティーク家具を修理する部品などを取り扱う会社を見つけると大概この地域であった。21世紀を迎え以前よりも家具店の数は減ったが、製造販売をする小さな工房や修理工房もたくさんあり、取っ手や丁番などの金具、ソファの詰め物などのパーツもこの地域で手に入る。今でも世界有数の家具屋街である。
paris01.jpg
路地を入ると修理工房や手作り家具の小さなショップがある。